
母乳育児と聞いて、何を思い浮かべますか?
たいていの方は、「辛い」というイメージを持たれることが多いようです。
最近は、産婦人科でも授乳指導の時間が減り、コロナ禍以降は母乳栄養が確立しないまま、不安を抱えて退院されるケースが急増したように感じます。
産後、お母さんの体では、妊娠前の体に戻ろうとする働き【退行性変化】と、母乳栄養をスタートさせるための【進行性変化】が同時に起こります。
これは、命をつないでいくために私たちの体にもともと備わっている素晴らしい力です。。
「備わっている力」をなぜ使わないのでしょうか
「備わっている力を何故使わないのか? なぜ嫌がるのか?」
私は、いつもそう思います。
すべての生き物において、親が子のお世話をすることは自然の営みです。
人間は哺乳類の中で一番未熟な状態で生まれ、成長するまでに最も時間がかかります。
それも、人類が始まってからずっと変わらない事実です。
時代背景はあると思いますが、母乳育児に対して悪い印象を与えている最大の原因は、産後すぐからの指導不足ではないでしょうか。
産院での声掛けや授乳指導がしっかり行われていれば、不安はあっても母乳育児に前向きに取り組めるはずです。

現場で実際に起きていること
昨年あたりから、産後間もなくお問い合わせいただくお母さんの中に、乳房がガチガチに張ったまま退院し、ご自宅へ戻られる方が増えています。
出産が終わると、お母さんの体では進行性変化が起こるため、産後2~3日頃から乳房が熱を持ち、急にガチガチに硬くなってきます。
これは母乳が作られ、分泌されるためのとても大切な変化であり、異常ではありません。
母乳を与え続けることで、5日目頃からは症状も軽くなり、次第に授乳前におっぱいが張る感覚へと変わっていきます。
おっぱいが張る感覚がなくなったことで、「母乳が出なくなった」と勘違いされる方もいます。
つまり、ガチガチのおっぱいのまま退院することは、本来は異常な状態といえます。
さらに驚いたことに、「授乳を頑張っていけば柔らかくなるから」と産院で言われ、搾乳の方法も分からず、赤ちゃんもうまく吸い付けないまま乳腺炎を起こして退院された方もいらっしゃいました。
その痛みをどうしたらよいか分からず、うつ状態になって相談されるのが現状です。
中には、「こんなにつらくて痛くて、誰も助けてくれないからもう嫌だ。」
と、産後2週間ほどで断乳を希望される方もいらっしゃいました。
産後にこのような出来事があれば、母乳育児に対するイメージが悪くなってしまうのも無理はありません。

母乳育児は決してつらいものではありません
しかし、母乳育児は決して辛いものではありません。面倒なことでもありません。
妊娠・出産・育児は、主体性を持って取り組むことが大切です。
正しいことを知り、学び、自分の体だからこそ自己ケアを行ってください。

・妊娠中から乳輪・乳頭を柔らかくしておきましょう。
(陥没・扁平乳頭の方は、妊娠前からのケアをおすすめします。)
・産後は、赤ちゃんをたくさん抱っこし、首の座らない体を安全に支えられるよう慣れていきましょう。
・乳頭亀裂に注意し、一日10回以上、しっかりおっぱいを吸わせましょう。
・「母乳しか与えなかったら預けられない」など、将来を心配し過ぎないでください。
そして、お母さん自身もしっかり栄養を摂りましょう。
お母さんの体に備わっている力
私たちの体にもともと備わっている機能を、使わなくなった場合、どうなっていくのでしょうか。
母乳が出る機能だけが失われるだけで済むのでしょうか。
統計学的には、出産経験のない女性は、出産経験のある女性と比べて乳がんの発症リスクが高い傾向にあるとされています。
また、人の体は生活環境に応じて変化していきます。
必要なものは発達し、必要のないものは退化していく。
それが私たちの体です。
日本人の体型も昔とは変わり、手足が長く、スリムな骨格の方が増えてきました。
こうした変化を見ていると、最近の育児状況を踏まえ、これから先のことを考えると、とても心配になります。
だからこそ、お母さんの体にもともと備わっている力を大切にしてほしいと思うのです。
一人で悩まず、ご相談ください
母乳育児への不安は、誰にでもあります。
だからこそ、悩みをそのままにしないでください。

お母さんの体に備わっている力を十分に引き出すためにも、正しい知識を身につけ、自信を持って母乳育児ができるよう、一緒に考え、サポートしていきます。
不安を放置せず、一日でも早めにご相談ください。
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